2009年7月6日月曜日

悦びに咲く花

明日、
目覚めたら梅雨空の湿った空気が鼻先に届いていて、
カーテンの隙間からは朝の透明な光が差している。
夜のうちに降った雨がこれから歩いてゆくアスファルトを
なめらかに覆っていて、きらきらとまばゆい。
記憶の中で笑う君はこれまでみたことがないほどの
純粋の水のなかで飛沫をあげて遊んでいて、
私はそれを遠くから眺めている。
笑い声がする。薄い白い皮膚にふくよかな血を淀みなく流す
年端もいかぬ少女が、アスファルトの岸辺を泳いでいる。
アイスコーヒーの注がれた透明なグラスを伝う水滴が、
裸の太腿に落ちて冷たかった。

夏は元気に泣いていた。
私は熟練した産婆のように夏を、高らかにすくい上げ、
泣きじゃくる子に微かな接吻をした。

世界はそこからゆっくりとひらき、
私は満足のいく朝食を食べた。
綺麗なブルーのネクタイをして、磨いたばかりの革靴の紐を締めた。

また別のところから笑い声が聞こえた。
それは数軒先の若い夫婦の笑いだったろうか。
定かではない茫洋とした世界のなかにその笑いは溶けていった。
燃え尽きた蚊取り線香の灰がベランダで風に吹かれ舞った。
玄関の扉を開けるとぬるい街の空気が遠慮なく私を包み込み、
後ろ手に扉を閉めると私は一歩踏み出して、
また違う笑い声と誰かの足音を聞いた。
私の足音がそれに混じった。
夏に包まれた私の呼吸音は何よりも私の耳に響き跳ねた。

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