幾人かの人に勧められていても、なんとなく縁のなかった、
山田詠美を初めて読む。「風味絶佳」。
よいではないですか。
六つの短編。
働いて飯を食って愛し合う。
三つの行為が溶け合って生活を造る。
それを人生と言っても世界と言っても血肉と言っても同じことで、
いまここに流れる時間の中でできることは、
それほど多くはなく、労働に勤しむ、旨い飯を食う、
そこに愛する人がいて、愛を感じている、というのを抜きに、
生活が成るわけではない。
生きることに意味などなくとも、生きなければならない。
その現実を僕はかつて二重の不毛さと名づけた。
その二重の不毛さを前にして、僕たちは茫然と立ちすくむべきではない。
たとえどうであろうと、そこに世界があり、人がおり、生活がある。
誠実にその現実と向き合うことを、自らに課すならば、
おのずから実践的であらざるを得なくなるはずだ。
山田詠美は、丁寧に言葉を紡いでいると感じる。
虚栄のないやわい親しみのなかにおいて、
崩れやすい何かに、そっと触れるかのように。
2008年9月27日土曜日
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